多重債務者: 本人の返済する能力を超えて、複数の業者から借金をしている債務者のこと。
一つの業者からの借金を返済できなくなり、他の業者からも借金して返済に充てる。ふたたび返済が追いつかなくなると、さらにまた違う業者から借り、また追いつかなくなると…。このようして多くの業者から借金を重ね、結果的に債務は多額となります。
国民生活センターの調査によると、多重債務者は近年激増しており、2005年時点で国内に150~250万人も存在し、そのうちの約35%が自殺を考えたことがあるということがわかりました。大きな社会問題となっています。
多重債務の原因
多重債務の原因は、債務者側では以下のような要素が挙げられます。
・不況やリストラなどの経済的環境悪化
・クレジットカードの向こう見ずな使用
・誘惑に弱い、怠け癖、ギャンブル癖、ストレス発散のための消費癖
・江戸時代の質屋などから続く、借金馴れした国民性 など
また、業者側の問題点としては、以下のような要素が挙げられます。
・正当なバランスを欠いた金利
・債務者の返済能力を適切に加味しない融資
・違法な金利設定、人権を無視した取り立てなどを行うヤミ金融の存在 など
多重債務問題の解決・多重債務者の救済にむけて
政府は、多重債務者問題の解消策として、融資体制を適正化する法律の整備を続け、近年では、悪質な業者を規制する「ヤミ金融規制法」(2003)、グレーゾーン金利廃止などを盛り込んだ「改正貸金業法」(2006)を制定しました。しかしこれらだけでは根本的に解決・救済できないため、総合的な取り組みとして2007年に多重債務問題改善プログラムを立ち上げました。
多重債務問題改善プログラムは、現在以下の4つの軸を据えて取り組まれています。
・相談窓口の整備・強化
各都道府県と弁護士会・司法書士会が共同で、多重債務者向けに無料で相談・カウンセリングの場を提供しています。
・セーフティネット貸し付けの提供
多重債務者に対して、「顔のみえる融資」として貸し付けを行っており、また最後の受け皿としての生活保護の適正な運用も図っています。
・金融経済教育の強化
社会に出る前の高校生までの段階で、ホームルームや家庭科で多重債務について扱い、多重債務に関する基礎知識やリスク、救済策を教育します。
・ヤミ金の撲滅に向けた取り締まりの強化
警察や監督当局は、ヤミ金の撲滅に向けて情報体制を整備し、摘発の強化に取り組んでいます。