クレジットカードに関して、よくあるのが法律への誤解。「クレジットカードって、年収の3分の1までしか使えないの?」「私の利用限度額はそれを越えているけど、大丈夫なの?」そんな会話を耳にすることもある。
実は、クレジットカードの2つの機能である、ショッピング機能とキャッシング機能では規制する法律が別々。その混同から誤解が生まれるケースが多いようだ。そこで今回は、クレジットカードをつくるときに知っておきたい法律知識について、初心者にもわかりやすくまとめてみたいと思う。
このページの目次:
クレジットカードに関わる法律まとめ:
それではさっそく、キャッシング機能とショッピング機能に分けて説明して行こう。まずは、キャッシング機能から。
キャッシングに関する法的規制:
2010年施行の改正貸金業法に準拠:
クレジットカードのキャッシングサービスが準拠すべき法律は、2010年に完全施行された「改正貸金業法」。これは、キャッシングによる借り過ぎ(貸し過ぎ)を規制するために改正されたもので、お金を貸す事業を営む貸金業者(消費者金融会社、クレジットカード会社、信販会社など)に適用される。
改正貸金業法の大きなポイントはふたつある。ひとつは、グレーゾーン金利が撤廃され上限金利29.2%は20%にまで引き下げられたこと。もうひとつは、貸金業者が年収の1/3を超える貸付をすることが原則として禁止されたことだ。
この後者が、一般に総量規制と言われるもので、貸し過ぎ(借り過ぎ)を防いて利用者を保護することが目的。例えば年収360万円の人が借入れ可能な額は、その3分の1の120万円までとなる。
貸金業者には信用情報の調査義務がある:
また法律では、クレジットカード会社などの貸金業者が個人に対してお金を貸す場合、指定信用情報機関(CIC、JICC)に照会してその人の個人信用情報を調査することが義務付けられている。クレジットカードへの新規入会時だけでなく、借入額合計が10万円を超える人は3ヶ月毎に、月間利用額が5万円を超える人は毎月、信用情報機関への照会が実施され、返済能力に問題がないかが継続的に調査されることになる。
ちなみに、総量規制で規制されるのは貸金業者者からの借入れだけで、銀行、信用組合、保険会社、証券会社などからの融資は含まれない。
クレジットカード審査への影響は?
借入の金額や状況によっては、収入証明書類(源泉徴収票、所得証明書類など)の提出も必要になった。自社の貸付残高が50万円以上の場合(利用可能枠が50万円を超える場合も含む)や、他社を含めた貸付額が100万円を超える場合は、収入証明書の確認が必須となっている。
これにより、キャッシングの利用枠が50万円を超える場合は、収入証明の提出が必須になることを理解しておこう。確実な審査通過のためには、申込み時にキャッシング枠を0にしておくといいだろう。
ショッピングに関する法的規制:
ここからは、買い物などの支払いに利用するシッピング機能について説明していこう。
2010年施行の「改正割賦販売法」に準拠:
クレジットカードのショッピング機能を規制する法律は割賦販売法。2010年に改正割賦販売法の第2段階施行が実施され、クレジットカードの審査ルールが変更され、現在に至っている。
この改正割賦販売法にも総量規制が導入されたが、改正貸金業法による総量規制とは違って、「包括支払可能見込額」という概念が導入されている。
ざっくり言うと、各人の包括支払可能見込額というものを計算して、すべてのクレジットカードの割賦販売利用金額の合計が、それに0.9を掛けた金額を超えないように規制されるというかたちになっている。
支払可能見込額とは:
利用者等の年収等から生活を維持するために必要な支出や債務などを除いた、1年間のクレジットの支払いに充てられると想定される金額。これを使って上の計算式をさらに詳しくすると、以下のようになる。
年収は1万円単位での自己申告で、年収証明書等の証明書類を提出する必要はない。また、生活維持費は最低限の生活を維持するために必要な1年分の経費のことで、世帯の人数、住宅所有の有無、居住地などにより公的な統計に基づいて定められている。
一括払いは対象外:
なお、「割賦販売法」という名称からもわかる通り、この法律の規制対象は割賦販売のみ。対象となるのは、支払い期間が2ヶ月を超えるショッピング利用で、具体的には2回払い、ボーナス払い、リボルビング払い、分割払いなどが含まれ、翌月1回払いは含まれない。つまり、分割払いやリボ払いなどの金利が膨らみがちな支払い方法に関して、その人の返済能力に応じた規制かける…という考え方がとられている。
逆にいえば、翌月一括払いに限っては、法的規制は受けないということになる。ここは、誤解のないように押さえておこう。
クレジットカード審査への具体的影響は?
クレジットカードの新規申込や増枠申し込み、また更新審査などの際には、カード利用可能枠の他に、包括支払可能見込額に基づいた割賦取引の利用可能枠が設定される。
自分の利用明細書をよく見てみれば、ショッピング利用可能枠とは別に、分割払いなどの利用可能枠が書かれているはずだ。信用度が高い人は、「ョッピング利用可能枠=割払いなどの利用可能枠」となっているが、中には、、「ョッピング利用可能枠>割払いなどの利用可能枠」というケースもある。普段あまり気にしていない方もいるかもしれないが、一度確認してみて欲しい。
以上、クレジットカード会社にかかわる法的規制についてまとめてみた。利用者の使いすぎや借り過ぎを防ぐことを目的とした規制だということがわかっただろうか?収入証明などを求められた場合は、協力するようにしよう。